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2018年9月3日月曜日

「雲のうえのべゑすぼおる」を観劇して


 

  昨年(2017年10月)、「雲のうえのべゑすぼおる」の公演で広瀬習一の役は、働きながら演劇活動を続けている黒田修一が演じました。彼が勤める職場のグループ「憲法を活かす京都郵政労働者の会」の会報に、ていねいな観劇の感想が掲載されていましたので紹介させて頂きます。(一部省略しています)




   「雲のうえのべゑすぼおる」を観劇して

                               中野 万里

 さる10月29日スカイプラザ浜大津にて生かす会メンバーの黒田修一さん出演の舞台を観てきました。
 原作上田龍氏の「戦火に消えた幻のエース」の内容については会報NO.69(2017.9.14発行)に詳しく載っていますが、戦争のさなかに職業野球(プロ野球)でデビューを果たすも僅か2年後に戦場で命を落とすこととなった広瀬習一の物語です。
 黒田さんはその広瀬投手の高校時代からなくなる22才までを演じられました。
 物語は少年時代のご近所さん、追分絵師の八軒先生を中心に進んでいきます。ベースボールに打ち込み、八軒先生の家の窓ガラスやらを壊す習一少年に最初はお怒りだった先生も類希なる運動能力を発揮し地元の大津商業へ入学、甲子園に出場する頃になると、先生は大枚を叩きラジオを購入してまで習一青年をその家族たちと応援します。
 卒業後、一旦は企業に就職するも入団テストを経て巨人入り、1年目の成績は8勝4敗、翌年は21勝6敗と開幕投手も務める活躍ぶりで巨人軍、期待の投手になります。
 しかし、入隊となりフィリピンのレイテ島へ。
 そして、物語は終盤、戦地での場面へ展開します。本格的に黒田さんの登場です。
 仲間の部隊へ連絡を取るため一人でゲリラ地域へ突入する場面です。曹長との話の中で、習一青年は戦争への思い、野球への思い、友への思いをグローブを胸に守りながら語ります。戦争が終わり、日本へ戻ったら再び野球をすることを夢見る習一青年に曹長は辛く当たります。黒田さんの若々しく透き通った声が習一青年の面影と重なり舞台にどんどん引き込まれていきます。
 そこへ、中隊長が慰問袋を持って現れます。任務を遂行し、戻ってきてから開けるという習一青年に穏やかに家族の気持ちを伝えます。この中隊長、曹長とは違いかなりできる上司であります。そして任務について習一青年に「「危ないと感じたらそれ以上は前へ進むな」と伝えます。
 しかし、習一青年は必ず舞台に合流し連絡をつけて戻ると忠誠を誓い、出発します。
 出発した後中隊長は曹長に「この任務は曹長の君が行くと言ってくれると思っていた」と呟くのです。中隊長には若者の命を無駄にはできないとの思いがあったのでしょう。
 遠くで銃声が聞こえます。そして、習一青年は帰らぬ人となってしまうのです。
 ラストは八軒先生と習一青年の母、チームメイトの母らと思い出の球場跡地で亡き子供たちを思います。誰一人としてい遺骨は戻ってきませんでしたが、明るく元気にベースボールをしていた頃の思い出とその思い出の品とともに影おくりをして見送ります。
 最後はもう、涙しかありません…



(「憲法を活かす京都郵政労働者の会」会報2017年12月5日 №71より)


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